近藤先生の本は、いままで読んだことがありませんでしたが、
その書かれている内容から、私のようなど素人でも、信頼するに値する
先生だと感じました。
簡単にご紹介させていただきます。興味を持たれた方は、ぜひ購入し
てお読みになってみてください。
* 出版界の事情には疎いですが、売り切れてしまうことがあるようですので、お早めに・・・。
T.本当に効かないのか
@大腸がんが肝臓に転移した患者ですが、主治医から「昔に比べて今
の抗がん剤治療は余命が延びている」と説明を受け、実際に数値も示さ
れました。それでも効かないというのですか。
それは数字のマジックないしトリックです。大腸がん肝転移の場合、
昔も今も、臨床試験では抗がん剤に延命効果は認められていないので
す。
ただ近年、CTなどの検査技術が進んだことで、以前よりも小さな転
移病巣が見つかるようになった。昔よりも早く見つかることで、転移が
ん発見から死亡までの時間全体が延び、それで、一見余命が延びたよう
に見えるだけです。・・・
A肝臓がんの患者ですが、抗がん剤を投与されてから明らかに腫瘍は
縮小しました。これは効いているのではありませんか。
腫瘍が小さくなったら嬉しくなる、その気持ちはよく分かります。
ただ抗がん剤の本質は細胞毒なので、腫瘍は小さくなった、寿命も縮ん
だ、となりかねない。あなたの寿命も、はたして抗がん剤で延びている
のかどうか不明です。
実際、肝臓がんを初め、肺がん、胃がん等の固形がん(腫瘤をつくる
癌)で行われた、無数に近い臨床試験では、腫瘤の縮小が認められても
延命効果は認められていないのです。・・・
B乳がん宣告以来、すっかり食欲をなくしていた母が、抗がん剤治療
を始めてから元気になり、食欲も出てきました。これは抗がん剤が効い
たからではないでしょうか。
食欲をなくしたのは心理的な影響が大きいのでしょう。
抗がん剤の本質は(強力な)細胞毒なので、通常、食欲は減退します。
食欲が回復したという本件では、おそらく、副作用止めの目的でステロ
イド(副腎皮質ホルモン)が、抗がん剤と一緒に処方されているのでし
ょう。
ステロイドは、体調を一見良好な状態に引き上げることができるので
す。しかしステロイドは、種々の重大な副作用のある(強力かつ危険)
な薬で、一見体調が良くなった水面下では、体はボロボロになっていき
ます。他方、一見体調が良くなっているので、患者は気をよくして抗が
ん剤治療を長く続けることにもなり、通常の場合よりも毒性が余計に蓄
積します。
これらの結果、抗がん剤だけの場合よりも、縮命効果は大きくなりま
す。
C抗がん剤はすべてのケースで効果がないのですか。
肺がん、胃がん等の固形がんに抗がん剤が使われる場合は、大きく分
けて三つあります。
一つは臓器転移を叩くためで、二つ目は、原発病巣を手術や放射線で
治療した後に、再発・転移の予防目的で行われる「術後補助療法」で
す。両者とも、どの固形がんでも、延命効果はありません(拙著「抗が
ん剤は効かない」参照。以下「近著」)。
三つ目の使い方として、放射線治療と併用する「化学放射線療法」が
あります。抗がん剤を併用することにより、放射線の効果を高めること
を目的とし、喉頭がんや子宮頸がん等、さまざまながんで行われていま
す。 この場合には、抗がん剤に一定の意味があると考えています。ただ
し、臓器移転を叩くことはできず、抗がん剤の毒性が問題になること
は、抗がん剤を単独で用いる場合と同様です。
D父が大腸がんで、「余命三ヶ月」と診断されました。見ている限
り、そんなに早く亡くなるとは思えないのですが、どうやって診断して
いるのですか。
大腸がんで余命を言われたとなると、肝転移があるのでしょう。
ただ、肝転移の個数や大きさは、患者によってまちまちです。また、
転移状況の同じ患者を集めても、病巣の増大するスピードは患者ごとに
異なっているので、余命を正確に判断するためには、病巣の増大スピー
ドを調べることが必須です。
肝転移の場合には、実際の余命判断は、以下のようにします。
前提として、患者の命が危なくなるのは、肝臓体積の八割程度を移転病
巣が占めるようになった時です。
そこで、少なくとも数か月の間隔を開けて、超音波検査やCTで病巣
の大きさ(の推移)を計測し、増大スピードを計算します。
次にそれをもとに、肝臓の八割を転移が占めるまでの期間を推測するわ
けです。
こうした診断作業をせずに下された余命判断は、当てになりません。
私の診察室を訪れる大腸がん転移患者でも、余命三ヶ月とか六か月と
(前医)に言われたケースが多いのですが、自力で歩ける方では、余命
一年以内と判断できる人はほぼ皆無でした。
E三年前に胃がんが見つかり、「余命三か月」と診断され、抗がん剤
治療をした結果、今も生きています。延命効果があったのではないでし
うか。
前項のような診断作業を行って、仮に余命三か月と判断した場合にも
実際の生存期間は、一か月であったり、六か月だったりとまちまちにな
り、幅があります。
これに対し、余命一ヶ月と判断した場合には、幅はもっと狭くなり、
大多数の方は三か月以内に亡くなられます。ただこれは私が判断した場
合で、他の医者たちの余命判断がどの程度正確であるかは不明です。
二点指摘しておきましょう。
胃がんに限らず、固形がんの増大スピードはまちまちなので、初診時
に、あるいは初診後間もない時期に、担当医が余命を断定したら、不正
確であるか、ウソであるかのどちらかです。
第二には、手術や抗がん剤治療を受けさせるための、「脅し」の道具
として、余命告知が使われています。
本件の場合も、元々(抗がん剤治療をしなくても)、三年以上生存でき
る程度の進行度であり、医者が「三か月」と脅して、抗がん剤治療を受
けさせた可能性が高いと思われます。
Fよく「抗がん剤の名人」のことを聞きます。
本人に合う抗がん剤を見つけ出すのが重要で、それには経験と技術があ
ると。ですから、抗がん剤は、投与の方法によっては効くのではありま
せんか。
「効く」という意味をはっきりさせると、寿命が延長して初めて、
「効いた」と判断するのが正しい。しかし種々の固形がんで、無数に近
い臨床試験が行われてきても、抗がん剤に延命効果は認められなかっ
た。そこで(自称)名人は、がん腫瘤の縮小をもって、「効いた」と宣
伝することになります。
が、そこには幾つもの問題があります。二点だけ指摘しておきましょ
う。
第一に、どの固形がんでも、抗がん剤に対する感受性(縮小の程度)
は患者によってまちまちなので、がん病巣が例外的に(著しく)縮小す
る人が必ず出てきます。だからといって、延命効果を得たことにはなら
ない。・・・・
第二には、仮にがん腫瘤の縮小を目標としても、実際に抗がん剤を使
ってみなければ、それが縮小するかどうかは分からない。つまり、縮小
するかどうかを事前に見分けられる「経験や技術」は存在しないので
す。それなのに経験や技術を強調するのは、集客のためのセールストー
クです。
患者から38の質問
「近藤先生 本当に抗がん剤をやめていいのですか?」
近藤 誠 (慶応大学医学部講師)
P62−64
U 抗がん剤投与の前に
@肺がんの告知を受け、抗がん剤治療が標準治療と言われました。
この「標準治療」とは、誰がどうやって決めているのですか。
標準治療の定義はなく、ある進行度の患者に行われるべき治療、とい
ったニュアンスで使われる用語です。
が、がん治療の分野では、標準治療とされていても、間違った治療法
であることが少なくない。
一例を挙げると、乳がん治療では、乳房と(その裏側にある)大胸筋
まで切除する手術が、70年間にわたって全世界の全乳がん患者に行わ
れてきました。絶対的な標準治療だったわけですが、今はすっかり廃れ
て、乳房温存療法が標準治療になっています。
また、胃がん、大腸がん、子宮頸がん等では、行うべきではない手術
法が、日本では現在も標準治療とされています。
抗がん剤治療の分野では、新薬に関する(臨床試験の)論文が発表さ
れると、その薬を使うのが標準治療だと(医者たちが)言い出すことが
多い。
この場合、問題点は二つあります。
一つは、新薬を使えば使うほど、製薬会社や、(臨床試験を実施す
る)医者たちが潤う関係にあることです。そういう状況下では、データ
的な根拠が薄くても、医者たちは「これが標準治療だ」と叫ぶようにな
ります。
第二点は、新薬の効果が認められたとする臨床試験の結果が、本当に
信頼できるかどうかです(解説する紙幅の余裕がないので、近著参
照)。
A地方の個人病院で抗がん剤治療をしていますが、主治医に抗がん剤
について質問しても、あまりはかばかしい説明をしてくれません。
国家資格のある医師が、抗がん剤について知識がないということはあり
得るのでしょうか。
あり得ます。というよりも、圧倒的多数の医者は、抗がん剤について
きちんと勉強していないはずです。
日本の医療制度には前近代的な面があり、医師免許さえ持っていれ
ば、格別専門的なトレーニングを受けなくても、さまざまな診療行為を
することができます(外科医、整形外科医等が開業すると、内科、小児
科、皮膚科等まで標榜して診療するのが一例)。
加えて日本には、固形がんの抗がん剤治療を専門とする医者が少な
く、内科医、外科医、婦人科医、泌尿器科医等が、本来の業務の片手間
に抗がん剤治療を施行するのが普通です。
しかし彼らは、日常診療が忙しいので、抗がん剤治療について十分な学
習をしたことがない。新薬が認可された後には、製薬会社が作成して配
布するパンフレットを拠り所にして処方しているのが実情です。
B自分に処方されている抗がん剤が、どのような審査で認可されたの
かを知ることが出来ますか。また、薬効や副作用を知りたい場合、「添
付文書」というものがあるそうですが、どうしたら見られますか。
また、それは一般人の知識で理解できるものなのでしょうか。
抗がん剤に限らず、薬を処方されている方は、「添付文書」を読むこ
とをお勧めします。製薬会社が医療機関に納入する薬に添付する文書で
すが、頼めばコピーしてくれる医者や医療機関も増えています。
万一断られてしまった場合には、インターネットで検索・閲覧できま
す。キーワード「添付文書」で検索して、「医薬品医療機器情報提供ホ
ームページ」に入り、冒頭にある検索欄に医薬品名を入力すればよい。
添付文書で注目すべきは、「重大な副作用」の項です。専門用語が並
んでいますが、どんなに重大かは、一般人であっても理解できるでしょ
う。・・・
C抗がん剤の臨床試験データがおかしいそうですが、データがきちん
としたものかどうかを判定する第三者機関はないのですか。
新薬認可の場合には、厚生労働省が中心となって、臨床試験データを
審査します。ただ厚生労働省は、製薬会社とのつながりが強く深いの
で、それが第三者機関による審査といえるのかどうか。
また審査にあたるのは、これも製薬会社とのつながりが強い「腫瘍内
科医」たちなので、公平な審査は期待できない。
他方、抗がん剤が認可された後には、臨床医たちが中心となって実施
する臨床試験がよく行われます。これに関しては、第三者機関的なもの
すら不存在です。データを取りまとめて統計をとるのが製薬会社という
ケースも多く、試験結果の信頼性を云々する前提に欠けます。
D急性白血病は抗がん剤で治ると聞きました。
治るがんと、治らないがんがあるのですか。抗がん剤で治るがんと、
治らないがんを教えてください。
抗がん剤で治る(可能性がある)ものは、急性白血病、悪性リンパ
腫、睾丸のがん、子宮絨毛がん、各種の小児がんです。
白血病でも、慢性白血病は治らず、悪性リンパ腫も(逆説的ですが)悪
性度の低いものは治らない。
また急性白血病は、若いほど治癒率が高く、高齢になると治らないの
で、60歳以上では抗がん剤治療は止めたほうがよいとする意見もあり
ます。
これに対し、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、腎がん、膀胱が
ん、子宮がん、乳がん等の固形がんは、抗がん剤では治らない。
なぜ固形がんが治らないのか、逆に、なぜ上記5種類のがんは治るの
か、理由は不明です。
ただ、それらの治るものでは、がん細胞のアポートシス(プログラムさ
れた細胞死ないし細胞の自殺)が、抗がん剤によって誘導されやすいの
だ、と考えられています。
E抗がん剤に延命効果はなくても、刹細胞効果があることは確かで
す。ならば、たとえば乳がんの手術後、とりきれなかったがんを殺すた
めに投与する、術後補助療法は意味があるのではないですか。
長期間投与するわけではないので、副作用の影響も少ないように思いま
す。
質問者には誤解がありそうです。術後補助療法でも、転移がんに対す
る抗がん剤療法と、内容はほぼ同じなのです。
点滴静注方式だと、抗がん剤の量が多いので、毒性が早期に強く出ま
すし、経口投与方式だと、一回(一日)ごとの毒性は低くても、投与期
間が長くなるので、毒性が蓄積し増大する。
結果、補助療法でも、抗がん剤の縮命効果が必ず生じるわけです。
では、がん細胞に対する効果はどうか。
乳がんに限らず、がんの術後は、患者の体の中にがん細胞が残ってい
るか、いないかのどちらかです。
しかし諸検査をしても、個々の患者がどちらに属するか判定できない。
それゆえ補助療法は、術後患者の全員にすることになります。
その場合、がん細胞が残っていると、仮に微小ながん病巣でも多数の
がん細胞が存在するので(1ミリ大の病巣に、百万個のがん細胞)、抗
がん剤で治ることはないのです。
他方、術後補助療法を受ける人たちの大部分は、体の中にがん細胞が
残っていない。この人たちは、いわば健康な状態に戻っているといえま
す。それなのに抗がん剤治療をすれば、健康な人に毒を投与するのと同
じで、寿命を縮める効果しかないわけです。
F肺がんですでに手術ができない状態ですが、抗がん剤を使ってがん
を小さくすれば、手術ができるかもしれないと言われています。
こういった抗がん剤の使い方は、ありですか。
これを「術前化学療法」といい、肺がんその他の固形がんで行われて
います。が、生存率を上げる効果はない。なぜならば、
第一に、体のどこかに転移が潜んでいる人は、それが微小な病巣であ
ってもがんの細胞数が多いので、抗がん剤で治すことはできない。
他方、転移のない人は、縮命効果だけを被ることになります。
第二には、手術は通常、原発病巣とリンパ節を取り除くことを目指し
ますが、手術ができないということは、原発病巣が周辺臓器に浸潤(侵
入)していたりして、取り残すことが確実なので、手術不能とされるの
です。
その場合に抗がん剤を使っても、がん細胞をゼロにはできないので、
周辺臓器やリンパ節に必ずがん細胞が残ってしまう。
とすれば、抗がん剤の治療後に手術をしても、がん細胞の残っている
真ん中を切り進むことになります。こうして、抗がん剤を用いても、術
後に再発することは必至なのです。
G父の肝臓がんが見つかりましたが、医師から、「これは手遅れ。も
っと早期に発見されたら何とか出来たかもしれない」と言われました。
早期発見とは、いつまでに発見することなのですか。
がんの種類によって、早期発見の意味は異なります。
肝がんの場合だと、患者の死亡する原因は一般に、多臓器への転移で
はなく、がん腫瘤によって肝臓が占拠された挙句の肝不全です。
そのため、根本的な治療が可能な段階で発見した場合に、「早期発見」
と呼ぶ傾向があります。
根本的な治療としては、手術と、ラジオ波焼灼療法があります(一般
的に、後者が施行可能なら、前者より適当)。
が、肝硬変が合併していると、がん病巣が何個も発生することが多く、
その場合、たとえ個々の病巣が小さくても、根治は困難ないし不可能で
す。本件は、担当医が根治性を匂わせる発言をしているので、病巣が一
個だった可能性があります。
しかし、仮に病巣が一個でもサイズが大きければ、やはり根治は困難
ないし不可能です。本件は、この意味で手遅れだったのではないか。
H私は、会社の集団検診で胃がんが発見され、「早期発見だからよか
った」と言われました。手術して、現在は健康に暮らしています。
やはり、早期発見には意味があるのではないでしょうか。
肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん等の、がん検診が実
施されている癌では、「早期発見」が意味するところは、前項の肝がん
と少し異なります。これらの癌は、原発病巣が相当大きくなった場合で
も、転移がなければ、原発病巣の手術や放射線治療は可能です。
他方、臓器転移があると、たとえ原発病巣が小さくても治すことは
できない。そして臓器転移の可能性が低いのは、結局は原発病巣が小さ
い場合なので、これらの癌でも小さな原発病巣を「早期がん」と呼びま
す。
* もともと臓器転移の少ない肝がんとは、着目点が異なる。
さて、検診が行われる癌も含め、すべてのがん患者は、臓器転移が存
在するか、しないかのどちらかです。
そして臨床データを分析すると、早期がんといわれる時期に転移がな
ければ、仮に原発病巣を治療しないで放置しても、その後に転移が生じ
ることはないことが分かります。
そこで私は、転移がある癌を「本物のがん」、転移のない癌を「がん
もどき」と名付けました(根拠データは、拙著「あなたの癌は、がんも
どき」参照)。
がんと診断された時点で、「本物」と「もどき」とを正確に見分ける
方法は、今のところありません(将来もおそらく出てこない)。
しかし他方、原発病巣を手術や放射線で治療した後、何年たっても転
移が出現してこなければ、治療した時点で体のどこにも転移が存在しな
かった証拠になります。
本件の場合も、転移が出現していないので、「もどき」だったと思われ
ます。
そこで、がんによると思われる症状のない健常者に行われるがん検診
の意味を考えてみると、発見した癌が仮に「本物」だとすると、すでに
臓器転移が生じているので、治療しても治らない。
他方、仮に「もどき」だとすると、放置しても臓器転移が発生するこ
とはないので、検診で発見する必要性がない、
つまり、がん検診が寿命を延ばすことはないと言えるのです。
I放射線と抗がん剤とで、副作用はどう違いますか。
放射線治療では、放射線が照射される範囲が(5センチ四方とか、2
0センチ四方というように)限られています。
それで、放射線のかかった臓器・組織の副作用しか生じない。
たとえば胸部・腹部の照射では、軽い吐き気や倦怠感が生じることがあ
ります。これらも、治療終了後すみやかに消失します。
問題は、治療終了後に生じる永続的な障害ですが、発生する線量は分
かっているので、それを越えなければよいわけです。
これに対して抗がん剤は、薬が全身に回るため、すべての臓器・組織
に副作用が生じる可能性があります。
点滴静注でよく用いられる「パクリタキセル」(商品名:タキソー
ル)の副作用のうち、重大なものだけ挙げると、ショック、アナフィラ
キシー様症状、白血球減少等の骨髄抑制、・・・・等々となっていま
す。多様で重大な副作用が多種見られることは、すべての抗がん剤に共
通しています。
J肺がん患者ですが、肺は抗がん剤の毒性が出やすいと聞きました
が、どういうことなのでしょうか。他にも、出やすい部位はあるのでし
ょうか。
抗がん剤や放射線に対する感受性(副作用の出やすさ)は、臓器によ
って異なります。・・・肺が障害を受けやすい臓器であることは明らか
です。
その原因は不明ですが、大気中にある種々の汚染物質やタバコの影響
が大きいと思われます。肺気腫という(喫煙者に多い、呼吸が困難にな
る)病気があると、抗がん剤の肺障害が一段と生じやすいので、医学的
禁忌(やってはいけないこと)と考えるのが妥当です。
他に重大な障害の出やすい臓器として、・・・・
K肺がんが骨転移して、非常に強い痛みがあります。
主治医からは、抗がん剤、放射線、鎮痛剤の、三つの選択肢があると言
われています。どれが一番効果的ですか。
即効性のある鎮痛剤を、先ず使うべきです。
標準的には、非麻薬のアセトアミノフェンを試します。有効かどうかは
一回服用すれば見当がつくので、効果が弱ければ増量して服用し、それ
でも駄目なら、リン酸コデイン、モルヒネの順に、麻薬系鎮痛剤を試し
ます。
痛みが非常に強いというので、これらの手順を飛ばして、いきなりモ
ルヒネから始めることも考えられます。
モルヒネの効き方は個人差があるので、ごく少量から始めて、鎮痛効
果の有無を確かめながら、段階的に増量していきます。
すべての疼痛患者に、最初、同じ量のモルヒネを処方する医者も多いの
ですが、それだと、ある場合には足らず、ある場合には多すぎることに
なります。
痛みのレベルに比べて処方量が多すぎると、吐き気や眠気が生じがち
なので、分量を加減することが大切です。
どの程度痛いか、薬がどの程度効いたかは、患者本人にしか分からな
いので、量の調整は患者自身が判断し、担当医はその判断を助ける役目
に徹することが重要です。
痛むのが一、二か所程度に限られている場合、もしくは(多数箇所が
痛んでも)飛びぬけて痛いところのある場合には、鎮痛剤と並行して放
射線治療を受けましょう。ほとんどの場合、照射部位の痛みは軽減し、
うまくいけば鎮痛剤も不要になります。
ただし、痛みが取れだすのに、通常、放射線開始から数日ないし数週間
要します。
これに対して、抗がん剤は使うべきではない。
多数の疼痛患者に使うと、痛みのとれるケースも散見されますが、例外
的です。
がん細胞を殺す力は放射線より弱く、副作用や毒性は、薬が全身に回
るため、放射線より数十倍強いのです。
仮に痛みが取れた場合も、副作用や毒性で苦しむので、総合的には損
をします。抗がん剤で痛みが取れそうなケースでは、放射線で必ず痛み
が取れるものです。
L最近、分子標的薬という新しい薬が開発されたと聞きました。
これまでの抗がん剤とはどう違うのでしょうか。
従来の抗がん剤は、DNA(遺伝子)等の細胞内分子を傷つける(正
常な働きを妨げる)ことにより、がん細胞を死滅させることを目指しま
した。
しかし、がん細胞は正常な細胞から分かれたものなので、細胞の構造
機能は、正常なものと共通しています。そのため正常な細胞がやられて
しまう結果としての毒性が生じ、もし毒性を避けようとすれば、抗がん
剤を十分投与できないというジレンマがありました。
このジレンマを解消するため、がん細胞中に存在する特定のタンパク
だけに抱きついて、その働きを妨げる物質が合成されるようになりまし
た。これが「分子標的薬」で、血液のがんである慢性骨髄性白血病で目
覚ましい成果をあげました。
他方、固形がんでも、乳がん、肺がん、大腸がん、腎がん等で、種々
の分子標的薬が開発され認可されています。
しかし、これらの固形がんの分子標的薬には、延命効果は認められなか
った(近著参照)。
固形がんの分子標的薬が成功しない理由の一つは、細胞内の分子の働
きが複雑だからです。
各細胞には2万種以上のタンパクがあるので、そのうち一つを分子標的
薬によってブロックしても、他のタンパクによって細胞の機能を維持で
きる場合が多いのです。
また、標的となるタンパクは正常な細胞にも存在するので、正常細胞
を死滅させた結果としての毒性が生じてしまい(死亡することもあ
る)、十分な量を投与できないわけです。
V 抗がん剤以外の治療は
@アガリクスなど、がんに効くというサプリメントがたくさんありま
すが、実際に効くものがあるのでしょうか。
延命効果の証明されたサプリメントはありません。
アガリクスやメシマコブでは、効能本にある「効いた」というエピソ
ードが、ことごとくでっち上げだったことが明らかになっています。
それ以外のサプリメントを逐一検討することは、紙幅の関係で不可能
なので、理論的に考えてみましょう。
がんで人が死ぬのは、がん細胞が分裂して数を増やす結果です。
とすれば、抗がん剤のようにがん細胞を死滅させるのではなく、がん細
胞を教育・訓練して、分裂のスピードが遅くなることを目指せば、延命
が図れることになる。・・サプリメントの支持者は、こうした考え方を
共有しているのではないか。
しかし癌は、遺伝子(DNA)の病気です。がん細胞の分裂のスピー
ドも、変異遺伝子によって規定されている。
そして残念ながら、どんな方法をもってしても、変異遺伝子を元に戻す
ことも、取り除くこともできないのです。
これが、サプリメントが癌に効かない理由の第一です(別の理由は事
項以下で)。
A前立腺がんの告知を受けました。数年前に告知を受けた先輩から、
野菜スープが効くと教わりましたが、効果はあるのでしょうか。
野菜スープに癌の成長を遅らせる効果はありません。
野菜に多く含まれるある種のビタミンは、多量に撮ると、逆に、発がん
性を高めることが臨床試験でも示されています。
人間の体は本来、多種多様な食材を撮ることを前提としており、特定
の成分を多量に撮ることは本来予定されていないので、危険です。
野菜スープやサプリメントを飲んで体調が良いという、がん患者の体
験談は、客観的には何の根拠にもならない。
その先輩は、おそらくPSA検査で、前立腺がんが発見されたのでし
ょうが、PSAで発見された前立腺がんは、その98〜99%が「がん
もどき」です。
それらを治療しないで様子を見ていくと、PSA値が自然に下落して
正常に戻ってしまうことも少なくない。ところが、もしそういう方がサ
プリメントを始めていると、本人やサプリメント業者は、PSA値が下
がったのはサプリメントの効果だと言い出すことになります。
胃がんや乳がん等でも、増大しない「もどき」や、縮小・消滅する
「もどき」は少なくないので、それらの方々が野菜スープを始めていた
場合には、やはりその効果だと思い込んでしまう。そういうカラクリが
あるわけです。
B私は乳がんで肺に転移が生じ、同病の方から食事療法を勧められて
います。効果はあるのでしょうか。また、危険はないのでしょうか。
食事内容が発がん原因の一つと考えられており、その影響でしょう。
食事の内容を変更すれば、癌に効果があると考える方が多いようです。
しかし、仮に食事中のある成分が正常細胞のがん化を助けたとしても、
遺伝子は既に変異しているので、その後にその成分を撮らなくしても、
変異した遺伝子には何の影響も与えません。また、別の食事内容に代え
ても、変異遺伝子が影響されることはないのです。
それどころか、食事療法は危険でもあります。
がんの成長スピードを決める因子は、大きく分けて二つあります。
一つは前述した変異遺伝子ですが、別の因子は、体の抵抗力です。
抵抗力というと、免疫を思い浮かべる方も多いと思われますが、がん細
胞に免疫が負けたからこそ、がんはその大きさになって眼前にある。
ここでいう抵抗力は、免疫以外の力です。
すなわち、がんに対する防波堤となるべき正常組織の強固さを意味しま
す。この強固さを支える最大の要因は、体の栄養状態なのです。
つまり、栄養状態が良ければ、正常組織はより強固になって、がん細胞
がはびこるのを阻止し、あるいは成長を遅らせる。これに対して、栄養
状態が悪くなると、がん細胞がはびこりやすくなるわけです。
栄養状態の良・不良の目安は、体重です。
がん患者は、ぜひとも標準体重を維持する必要がある。痩せすぎると、
がんの成長スピードが速くなるからです(これに対して、多少の太りす
ぎは、成長スピードを速めない)。
この意味で、ダイエットして痩せることは危険です。
逆に、食事療法で目の敵にされがちな、肉、魚、卵、エビ、カニ等には
危険はない。臓器転移のある人は余命が限られているので、大いに美味
しいものを食べて、残された人生を楽しむようにしましょう。
C私は肺がんで、三大療法(手術、放射線、抗がん剤)すべて効果が
なく、温熱療法(ハイパーサーミア)を勧められました。これは保険診
療もあるので、認められた療法だと思いますが、どのくらい効果があり
ますか。
私は80年代に、温熱療法を何人もの患者で試したことがことがあり
ますが、がんの死滅効果はほぼなく、副作用が強かったので(熱中症の
ようになる)、温熱療法には見切りをつけ、治療装置も撤去しました。
国が保険適用を認めたのは、早とちりだったと思います。
理論的に考えても、がん細胞を死なすためには、摂氏四十数度以上に
しなければならないのですが、その温度では、正常な細胞も死んでしま
います。
また、特定の(限局した)部位の温度を上げようとしても、局所に加
えられた熱は血流によって速やかに運び去られてしまうので、局所の温
度は十分上がらない。かえって運び去られた熱によって全身の体温が上
がり、熱中症になるわけです。
熱を、がんの局所に加えるのではなく、全身に加える「全身温熱療
法」も喧伝されています。が、前述したように、がん細胞の死滅する体
温にしたら患者が死んでしまうので、中途半端に体温を上げるだけです
(つまり、がん細胞は死滅しない)。
それで料金を請求したら、詐欺的です。
D膀胱がんで、医師からは免疫療法を勧められました。どのくらい効
果がありますか。
免疫は、細菌、ウイルス、毒素等、外から体内に入った異物を排除す
る役目を担っています。
もし相手を間違えて、体を構成する成分に攻撃を仕掛けたら大変なこと
になるので(その例が、関節リウマチ等の自己免疫疾患)、各人の体に
は、「自己」(自分本来の構成部分)と、「非自己」(異物)とを、見
分ける仕組みが備わっています。
ところで、がん細胞は正常な細胞から分かれたので、それを構成する
2万種以上のタンパクは正常細胞と共通しており、「自己」なのです。
それゆえ、がん細胞を免疫が攻撃することは、原則としてない。
ただ、変異遺伝子が作り出すタンパクは、一部が本来のタンパクとは異
なっているので、「非自己」と認識されて免疫によって排除される事態
がありえます。しかしそれは、がん細胞が発生したごく初期に限られま
す。がんが検査によって検出できる大きさになったということは、免疫
が「変異タンパク」に対して、無力・無効であったことの何よりの証拠
です。
この段階まで育つと、免疫に関与する細胞をいくら教育・訓練しよう
としても、まれな例外を除いて、免疫ががん細胞を「非自己」と認識し
て排除するようにはならないのです。
免疫療法を研究することは各研究者の自由ですが、治療として料金を
請求したらインチキです。
E肝臓がんの患者ですが、主治医からラジオ波焼灼という治療法を勧
められました。これはどういう治療法ですか。
電子レンジに電磁波が用いられていることから分かるように、電磁波
の作用で生体組織は熱を出します。そこで、超音波装置で病巣を観察し
ながら、肝臓に針を刺して病巣に到達させます。そして針先を開いて、
そこにラジオ波という電磁波の一種を流すのです。
すると、三センチほどの範囲にある生体組織は熱の作用で死滅します
(がん細胞のみならず、正常な細胞も死滅する)。
手術のように退院まで長期間を要することがない一方、治療成績は手術
に劣らない(手術より優れていると主張する医者もいる)ので、手術に
優先して検討されるべき治療法です。
原発性肝がんでは、病巣の数が少ない場合(常識的には三個程度ま
で)に、実施されています。
また、どの大きさの病巣にまで実施するかは、術者の腕前によるので
どの治療施設を尋ねるかが重要です。
他方、転移性の肝がんは通常病巣が多数あるので、あまりよい対象で
はない。ただ、大腸がん肝転移では、転移個数が少ない場合があるので
その場合には治療対象となります。
Fモルヒネは麻薬というイメージが強いのですが、痛みを和らげるた
めに使用しても、中毒などになりませんか。
モルヒネに対する依存ないし嗜癖が問題となるのは、注射した場合で
す。注射すると血中濃度が急に上昇し、そのため気分が変化するので
す。
しかし、がん疼痛に対するモルヒネ等の麻薬は、注射することはな
く、経口投与や経皮膚投与(パッチを貼る)によるので、血中濃度も急
に上がらず、問題は生じません。
また痛みが取れる量を超えて投与しようとすると、吐き気や眠気が生じ
て体がモルヒネを拒否します。
副作用の面からみると、ロキソニンやボルタレン等の非麻薬系の鎮痛
剤よりはるかに安全な薬です(これら非麻薬では、消化管出血等で患者
が死亡することも少なくない)。
W がんの正体とは
@私は数年に一回、大腸のポリープをとる手術をしています。
「このまま放っておくとがんになる」と言われています。良性のポリー
プが悪性のがんになることは、本当にあるのですか。
結論からいうと、ポリープは放っておいても、がんにはなりません。
ポリープをほうっておくと、やがてがん細胞が発生し(粘膜内が
ん)、さらに放置すると、粘膜の外にまで進展し、最後には進行がんに
なって他の臓器へ転移するという考え方を、「ポリープがん化説」とか
「多段階発がん説」といいます。
欧米の専門家の間では、これが広く信じられてきました。
しかし日本での研究で、ほぼ否定されたといえます。
というのも、仮にこの考え方が正しいとすると、ポリープの頂上にが
ん病巣ができ、それが大きくなって崩れてくるという、あたかも富士山
の頂上のような形の移行段階の病変を経て、進行がんになるはずです。
ところが内視鏡でいくら多数のポリープ患者を調べても、移行段階の
病変が見つからないのです。
それで、この移行段階は、内視鏡検査の行われない夜間のうちに始まり
かつ終わってしまう、それで昼間に検査しても移行段階が発見できない
のだ、と揶揄されています。
しかも日本人の臨床医の一人が、大腸がんは一見正常に見える粘膜部
分から急に立ち上がってくることを証明したのです(いわゆる平坦型が
ん)。
欧米でも、すべてのポリープを切除しておいても大腸がんの発生する
ことが問題とされるようになり、平坦粘膜からいきなり癌が発生すると
いう説が支持を広げています。
今日では、「このまま放っておくと癌になる」は、医者が検査料を稼
ぐためのセールストークに堕しています。
A肺がん患者ですが、今のところ転移はありません。
これは今後も転移しない「がんもどき」なのか、転移する「本物のが
ん」なのか、今の段階でわかるでしょうか。
肺がん、胃がん等、固形がんの多くは、原発病巣を治療してから三年
間転移が見られなければ、その後も転移が生じることはまずないと考え
られます。したがって本件で治療後三年以上経っていれば、転移がない
「がんもどき」だったのでしょう。
では治療前に、「本物」と「もどき」を見分けられないか。
この点両者は、病巣を顕微鏡で調べる病理組織診断で、同じく「癌」と
診断されます。
癌と診断されたものが、「本物」と「もどき」に分かれるので、治療
前ないし直後に、両者を正確に見分けることはできません。
ただ、たとえば肺がん一期を例にとると、転移して死亡するのは二割程
度なので、全体の八割は「もどき」であろう、という程度の事前予測は
つきます。
B私は大腸がんで、今のところ転移はないから早めに手術をしましょ
うと言われました。転移するがんに変わるのでしょうか。
医者が「今のところ転移はない」という場合は、二つのケースが考え
られます。
一つは、原発病巣の進行度から見て、どこかに転移が潜んでいる可能
性が高いけれども、それまでの諸検査では転移の存在が明らかでない、
という場合です。
転移が微小とはいえ既に存在しているのであれば、原発病巣の手術はほ
ぼ無意味です。
第二は、原発病巣の進行度から見て、転移が存在している可能性はほ
とんどない、というケースです。
この場合医者も、「もどき」の可能性が高いと考えているわけです。
この場合に、大腸がんを放置しておいたらどうなるか。
「もどき」を放置している間に初めてがん病巣が転移し、それが育っ
て転移病巣となって出現してきたというケースは、これまで一件たりと
も報告されていません。潜んでいる転移がない場合には、原発病巣を放
置しておいても、将来転移が生じることはないと考えられるのです。
C私の父が肺がんで手術を受け、術後の定期検診を昨年の11月に受
けた時は異常なしだったのに、12月に再検査を受けたら、手遅れだと
言われました。がんはそんなに速いスピードで進行するのでしょうか。
本件では、定期検診のわずか1か月後に再検査をしているので、その
間に痛み等の症状が出現してきて、それで再検査になったと思われま
す。
ところで、定期検診で用いられていたのは、おそらく胸部CTでしょ
う。そうすると、たとえば骨転移はCTでは発見しにくいので、定期検
診時には異常なしとされ、すぐに痛みが出てきたという事態は十分考ら
れます。この場合、骨転移は定期検診時に既に存在していたのですが、
痛みの出た時期はたまたま検診直後であったわけです。
一般論をいうと、転移病巣であっても、その成長スピードは比較的ゆ
っくりです。転移病巣の直径が倍になる期間が一か月というようなこと
は、皆無ではないが通常見られず、たいていは直径が倍になるのに何か
月もかかります。
X 抗がん剤を拒否するには
@人間ドックで乳がんが発見されました。日常生活には何の不便もあ
りませんが、放置するのは不安です。本当に治療をしないで経過を見て
いるだけの人はいるのですか。
また、その人たちはどうなりましたか。
乳がん、胃がん、肺がん、子宮がん、前立腺がん等、さまざまな癌で
治療をしないで経過を見ている人たちは、確実に存在します。
現に私の外来では、これまで150人以上の経過を見てきました。
あまり進行していない癌の人が多いのですが、進行がんの人たちも少な
くない。日本全体では、その数倍、数十倍の人たちが経過を見ているこ
とでしょう。
前立腺がんや胃がん等で、まとまった数の患者の経過観察結果を報じ
た学術論文も幾つもあります。
経過は、私が以前から述べてきたところと一致します。
「本物」は徐々に進行していくし、転移も出現してくる。
これに対して、「もどき」と思われるケースでは、徐々に増大するこ
ともあるが、大きさが変わらないこともあるし、縮小して消失すること
もある。そして転移は生じてこない(詳しくは、「あなたの癌は、がん
もどき」参照)。
A大腸がん患者ですが、抗がん剤を打つと身体がだるくつらいのでや
めたいのですが、主治医は、「抗がん剤をやめて病状が悪化しても責任
が持てない」と、やめさせてくれません。
また、患者への抗がん剤の投与は主治医が決めるのですか、それと
も、病院の方針なのですか。抗がん剤を止めたいなら、別の病院に行っ
てくださいと言われました。
どうしたらよいですか。
抗がん剤を使うかどうかは主治医が判断することですが、大腸がんを
担当する医者が一人しかいないと、その医者の考えが病院全体の方針に
見えることもあるでしょう。
「俺の言うことが聞けないなら他所へ行け」と凄むのはヤクザと同じ
で、倫理面も低級な日本の医療水準をよく表しています。
本当に悲しい現実で、何とかしなければと思いますが、患者さんに(ヤ
クザと)闘えとけしかけるわけにもいかない。
そこで代替策を考えてみましょう。
臓器転移を叩くために抗がん剤治療が行われている場合、延命効果は
ないので、転移による症状がなければ、病院通いをする必要はありませ
ん。
また、転移による症状があれば、緩和ケア医や放射線治療医に診ても
らうほうが通常妥当なので、紹介状を書いてもらい意見を聞きましょ
う。転移による症状を抗がん剤で何とかしようとする医者からは、離れ
るのが賢明です。
抗がん剤治療が術後の補助療法として行われている場合、やはり延命
効果はないので、主治医に見切りをつけても損にはなりません。
もっとも大腸がんは(肺がんや胃がん等とは異なり)例外的に、臓器
転移を治療すると治ることがある癌なので、しばらくは肝臓のチェック
をするとよいかもしれない。
ただ、仮に転移が生じた場合にも、そういう低級な病院で治療を受け
ないほうがよいので、近所の内科医を尋ねる等して、術後3年まで、半
年に一度程度、肝臓の超音波検査と、肺の胸部レントゲン写真を撮ると
よいでしょう(CT検査は被ばく量が多いし、そこまで精密な検査は必
要ない)。
また、どうしても今の主治医のところに止まりたければ、「点滴は副
作用が辛いから、経口の抗がん剤にしてください」と申し出て、薬をも
らって飲まずに捨てる、というのが一案です。
B父が胃がんで、今は腹膜などに転移し、主治医からは「あとは抗が
ん剤治療しかない」と言われました。抗がん剤を使いたくないのです
が、治療なしとなると、父が落ち込んでしまうのではないかと心配で
す。
何か治療は継続したいのですが、他に手段はないのですか。
親思いのお子さんを持たれて、お父様も幸せですね。ただ癌の場合
は、本人は抗がん剤を止めたいのに、夫や両親が承知しないといったケ
ース等、家族の優しさが逆に患者本人を苦しめることが多々あります。
それに本件で、延命策があると偽った場合、どういう将来が待ってい
るのか。辛い(寿命を縮めかねない)抗がん剤治療を受けるか、金食い
虫の民間療法に走るか、どちらかでしょう。
その結果、体力、お金、時間を空費して、いよいよ本人が最後を自覚
したときには、もう何をする気力も体力も時間も残されていない、とい
った事態を迎えることは確実です。
私は、こういう場合の解決策は、患者本人と家族が真実ないし情報を
共有することの中にしか見いだせない、と考えています。
本件でいえば、腹膜転移は早晩死を免れないこと、根本的な治療法が
ないことを話す。そして、本人がそれらを理解すれば、本人と家族が互
いに感謝しつつ、残された時間を充実させてすごすことができます。
もちろん本人が理解せず、免疫療法等のインチキ療法に走ることもあ
るでしょう。しかしそれは、本人の判断なので仕方がない。
ではあっても、偽りの介在しない生活や家族関係は、これまでより充た
されたものになるはずなのです。
C今までAという抗がん剤を投与されてきましたが、効果がないので
Bに乗り換えたらどうかと提案されています。
乗り換えるべきか、止めるべきか、どうでしょうか。
効果がないというのは、がん腫瘤の縮小が見られなくなったか、逆に
増大してきた、という意味だと思います。
抗がん剤は、腫瘤が縮小した場合にも、延命効果は認められないので
すが、それは抗がん剤に毒性による縮命効果があるためです。
今の抗がん剤(A)を止める判断は妥当です。
では、Bに乗り換えたら効果があるのか。
抗がん剤にはいろいろな種類があり、胃がんや乳がん等個々の癌に使用
が認められている(認可されている)抗がん剤も、複数あります。
しかしいずれも、殺細胞薬である点で共通している。
それゆえ、正常な細胞を死滅させることによる毒性と、その結果として
の縮命効果を確実に伴います。
他方、ある抗がん剤で縮小しなかった癌は、各細胞に「抗がん剤耐
性」が備わっているわけで、通常、別の抗がん剤にも耐性があります。
とすれば抗がん剤を乗り換えても、縮命効果と耐性を伴うわけで、毒性
以上の効果は期待できません。
結局、単に抗がん剤(A)を止めるのが妥当です(乳がんを例に、抗
がん剤を乗り換えるたびに寿命が縮んでいくデータ的根拠を、近著に示
した)。
Dなぜ効かない抗がん剤を、医師は勧めるのでしょうか。
どういう医者も、抗がん剤が効かないことを知っているか、知らない
か、どちらかであるはずです。
後者の場合、その医者は勉強が足らず、そのため、抗がん剤は効くと思
い込んで、患者に勧めているわけです。
前者の知っている医者の場合は、抗がん剤を勧める理由は複合的で
す。
患者に「もう治療法はない」と言い出せないという心情もあるでし
ょう。
「抗がん剤は効かない」と断言したら、同僚や院長に白い目で見ら
れ、仲間はずれに遭うかもしれない。
他方では、抗がん剤を使うほど医療機関が儲かるという仕組みもあり
ます。抗がん剤の売り上げのほとんどは製薬会社へ行ってしまい、病院
の利益にはならないのですが、患者に発生するさまざまな毒性に対処す
るための、治療代や入院代が大きいのです。
患者が亡くなるほどの毒性が生じれば特に儲かるという、おぞましい
関係があります。
また、「腫瘍内科医」という、固形がんの抗がん剤治療専門医は、抗
がん剤治療に意味がないことを認めることは、自分の職業の無意味さを
自白するのと同義なのです。
これらの諸事情があいまって、抗がん剤治療が推進されているわけで
す。
E効き目のある抗がん剤が開発される可能性はあるのでしょうか。
抗がん剤が効くためには、がん細胞の成長(つまり分裂)だけを抑制
し、正常細胞のそれは抑制しないことが必須です。しかし、がん細胞は
正常細胞から分かれたものなので、細胞の構造や機能が共通していま
す。したがって、がん細胞を抑制する物質は、必ず正常細胞も抑制して
しまう。この例外はありません。
したがって、固形がんに関しては、効き目のある抗がん剤は、永遠に
開発不能と思われます。
F私は七十歳の男で、仕事はすでにリタイアし、趣味のゴルフを楽し
む悠々自適の暮らしですが、先日、膀胱がんと診断されました。
すでに転移があるようで、抗がん剤治療と、排尿などのQOLを考え
ての膀胱全嫡出を勧められました。
近藤先生なら、どのような治療法を選びますか。
転移というのは、リンパ節転移ではなく、他の臓器(骨や肺)への転
移と思われます。もしリンパ節転移なら、医者は、QOLのためではな
く、根治のための手術だと強調しただろうからです。
そこで臓器転移の存在を前提とすると、残念ですが、過半は一年以内
に亡くなり、少数の人が二年生きることができ、ほぼ全員が三年以内に
亡くなります(膀胱がんの場合)。
抗がん剤治療は無意味かつ有毒で、それこそQOLを損ねます。
それゆえ私は、抗がん剤治療は決して受けない。
また膀胱全摘出術も、がんが治らないことが分かっているのに、手術
は過大な負担を患者に課し、それで死ぬこともある。
術後の排尿処理が大変だし、人口膀胱を作成してもらっても、自然の膀
胱のようには排尿できません。
といって、膀胱への放射線治療も、手術ほどではないが、副作用ない
し合併症の問題があります。
それゆえ、症状が血尿程度であれば、私は原則として放射線治療も受け
ない。
ただ、がんが周辺組織に入って、頻尿等の不快な症状が出れば、たぶ
ん放射線治療を受けるでしょう。その場合、放射線の総量を中等量(4
0〜50グレイ程度)にしておきます。
化学放射線療法(ケモラジ)といって、抗がん剤と放射線とを併用す
る方法が増えていく兆しが日本にもありますが、本件では臓器転移があ
るので、ケモラジではなく、放射線単独治療にします。
本件では、いずれ臓器転移が育ってくるはずですが、脳、肺、肝臓は
転移による症状がなければ、治療を受けない。
脳は麻痺症状が出たら、放射線治療を検討しますが、そのときの全身
状態との兼ね合いの判断になります。
骨転移は痛みが生じることが多く、痛みがあれば、まず鎮痛剤を試し
ます。非麻薬系鎮痛剤から始めるのが標準的ですが、痛みが強ければ、
最初からモルヒネを極少量(一回2ミリグラム程度)試し、痛みの程度
をみながら増量する方法を選ぶでしょう。
また痛みの箇所が限られていれば、放射線治療も受けることにしま
す。
最期の場所は、家族が面倒をみてくれるというなら在宅を選び、迷惑
をかけそうなら緩和ケア病棟(ホスピス)に入所します。
患者から38の質問
「近藤先生 本当に抗がん剤をやめていいのですか?」
近藤 誠 先生 (慶応大学医学部講師)
文藝春秋 季刊秋号 「がんを生きる」
定価 1,000円 P62−78より
◎ 特に、現在がんで苦しんでいらっしゃる方には、ぜひ読んでいた
だきたいです。何百万円もの価値がある(お金持ちの人には、そうした
金額の計算など無意味なほどの)・・・ように、私などには思えます。
それで、ぜひ読んでいただきたくて、詳細にご紹介させていただきま
した。著作権などの関係で問題があるのかもしれませんが。
文藝春秋 季刊秋号 には、他にも、
@「私はこうしてがんを受け入れた」
やなせたかし・ 石井ふく子・キャシー中島・小椋佳・米長邦雄・鳥
越俊太郎・田原総一郎・・・著名な方々の、スペシャル・エッセイの特
集。
A名医が薦める「がんの名医」32人
B医者しか知らないがんの常識
Cがん保険のカラクリ
D家族の悲しみを癒す「百の物語」
Eがんと向き合う宗教病院
Fがん治療完全スケジュール帳
・・・その他、秀逸で盛りだくさんの内容ですので、
ぜひお読みになってみてください。
出版界の事情はよく知りませんが、前に書店で品切れなため注文し
てもらったところ、結局入手できなかったことがありますので、お早め
に・・・。
最後まで目を通していただきまして、本当にありがとうございます。
お疲れ様でした。・・・私も一週間前から、「近藤教」の信者になりま
した(というと、先生はお怒りになるでしょうか)。
お体に気を付けて、これからもがん患者のために(また、日本の医療
水準の向上のためにも)闘っていただきたいです。
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